印刷機オペレーターの現状
印刷機オペレーターといえばどのような仕事を想像されるでしょうか。インクまみれの汚い仕事、納期に追われ残業や休日出勤ばかりの厳しい仕事、大きな印刷機に巻き込まれてしまう危険な仕事など、どちらかというと良くない印象を持っている方のほうが多いのではないでしょうか。
いまだに3Kのそろった印刷会社もあるとは思いますが、日本全国すべての印刷会社が3Kというわけではありません。昨今、CSR(企業の社会的責任)の観点から労働環境がすっかり様変わりしています。特に取引先が大手メーカー等の場合には、仕入先の印刷会社に対しても厳しく指導が入り労働環境の改善を求められます。
これから印刷業界に飛び込もうとする方にとって、労働環境のいい印刷会社を選択する一つの指針になるのではないかと思います。
あまりイメージの良くない印刷機オペレーターという職種ですが、まだまだ経験がものをいう職人的な世界でもあります。数々の印刷経験を積みノウハウを持った熟練の印刷機オペレーターは高齢化し、将来を担う若手の印刷機オペレーターが育っていないという業界の課題もあります。
特に中小零細印刷会社では、高価な最新の印刷機に設備投資するにはリスクが大きいため、従来の印刷機がまだまだ現役でフル稼働しています。そのため、これから印刷の技術と知識を習得し職人的な印刷機オペレーターを目指す若年層は、将来有望な職種ともいえるのです。
印刷機オペレーターの仕事内容
良くないイメージばかりの印刷機オペレーターですが、一体どのような仕事をしているのか簡単にまとめてみたいと思います。仕事内容を知ることで印刷機オペレーターに対するイメージが変わるかもしれません。
印刷方法には大きく分けて、平版印刷(オフセット印刷)・凹版印刷(グラビア印刷)・凸版印刷(活版印刷)・孔版印刷(スクリーン印刷)の4つがありますが、ここでは最も多くの印刷会社で設備されている枚葉オフセット印刷機におけるオペレータの仕事を手順に沿って説明します。
枚葉オフセット印刷機というのは、一枚づつ給紙され一枚づつ印刷するのに対し、輪転オフセット印刷機は巻き取り紙対応で、より多くの印刷物をより早く印刷することができます。
印刷業界が初めての方にとっては専門用語が多く、分かりにくい部分が多いと思います。印刷業界が初めての方の多くは、仕事の中でも力仕事の要素が強い「紙積み」から任されるようです。
印刷の手順
印刷の手順には大きく分けて4つの段階があります。
- 準備
- 刷り出し
- 本刷り
- 刷了
準備
1.作業指示書の内容を確認する
どんな印刷物にするのかは作業指示書に詳しく記入されていますので各項目をそれぞれ確認します。
納期、刷色、紙、仕上仕様(最終形態)、製本加工の有無などを十分に検討し、他の仕事との調整を行ないながら詳細なスケジュールを立てます。納期が厳しい場合には次の製本加工工程(折、綴じ、断裁など)との調整を行ないます。それでも納期通り納品できないようなケースでは営業部門との調整を行なう必要があります。工程を管理する専門部署があるような印刷会社では、営業と直接交渉をするようなことはないでしょう。
2.材料の確認、刷版の確認、インクの確認
実際に刷り始める前に、それぞれの材料が揃っているか確認します。
必要な版数分の刷版が、印刷仕様に基づき準備されているか。
刷版のクワエ方向に間違いがないか、キズや汚れがないか。
指示書にある紙の種類、名称、坪量、目なり、枚数が間違いなく入荷されているか。
C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)以外に、特色は使用してないか。
色校正紙や刷見本など、色調整の基準となる資料は揃っているか。
この段階で、不明確な点について詰めておかなければ、後々スケジュール変更を余儀なくされるようなトラブルに発展する恐れもあります。
3.印刷機の準備をする
作業指示書のとおり、材料が準備出来たら印刷機の準備に取り掛かります。
フィーダ部に指定された紙を積んでいきます。平版印刷で使う紙は板状の大きな紙がクラフト紙に包まれていますので、包みを開封します。そのままフィーダ部に乗せると、湿気や静電気で紙同士が貼りついたようになり印刷機に詰まりやすくなるので、両手で紙の間に空気を入れるようにしながら積んでいきます。
カラー印刷であればC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)の刷版をキズがつかないように慎重に印刷機に取り付けます。そのうえで各色のインキの補充と調整を行ないます。同時に湿し水の調整も行ないます。
刷り出し
準備が整ったら、実際に印刷を始めていきます。刷り始めは色調や見当が正確ではないので、少し刷ってはインク量や湿し水や見当を調整し、基準となる一枚(基準紙)を作っていきます。必要に応じて、上司や管理部門に提出し了承を得ます。
印刷は、インクや湿し水で紙自体が伸びたり、天候や季節による湿度や気温の微妙な違いでインクのノリの良し悪しがあったり環境で大きく左右されます。熟練の印刷機オペレーターには、いかなる状況でも最適な調整ができるような感覚が長年の経験から備わっているのです。
本刷り
基準紙に合せて本格的に印刷を行っていきます。本刷りになると約10,000枚/時間の早さで刷りあがっていきます。印刷している最中はときどき抜き取って品質チェックを行ないます。
最新の印刷機ではカラーマネジメント機能が備わっており、ほぼ基準紙通りに印刷することが可能となっています。
刷了
必要な部数が印刷されたら印刷終了(刷了)となりますので、次の仕事のためにブランケットの掃除などの準備に取り掛かります。
刷り上がったばかりの印刷物はインクが乾ききっていないので、次工程に移る前に一定期間乾かす必要があります。
印刷機オペレータの仕事内容のまとめ
印刷会社によってさまざまですが、一般的に紙積みから始めて印刷機を一通り使いこなせるオペレーターになるまでには5年くらいはかかります。システム化された最新の印刷機からアナログな従来の印刷機まで印刷機にもいろいろなタイプのものがあります。しかし一連の流れは大体どこも同じですが、従来の印刷機の方が印刷に携わっている感が強いのではないかと思います。
最後に、オフセット印刷機には枚葉オフセット印刷機のほかに巻き取り紙に対応する「オフセット輪転印刷機」という大量印刷物向きの印刷機があります。この印刷機が設備されている印刷工場は24時間稼働が常識となっています。
Bサイズ対応の輪転印刷は、スーパーや家電量販店など流通系や不動産系のチラシなどの仕事多く、Aサイズ対応の輪転印刷はおもにフリーマガジンや旅行パンフレットなどです。どちらかというとBサイズ対応の輪転印刷の仕事の方がよりタイトなスケジュールで動きます。印刷会社を選ぶ際の参考にしてください。
将来の転職やスキルアップのために取得しておきたい資格
印刷機オペレーターになるために、何か資格が必要かというとそうではありません。印刷の知識があり、印刷機が扱えれば立派な印刷オペレーターと言えるでしょう。
しかし、印刷業界は将来が危ぶまれている業界であるということは忘れてはいけません。この先勤務している印刷会社が突然倒産し、職を失ってしまうことも十分に考えられます。
そんな時に役に立つのは資格です。今いる会社でキャリアアップを目指すためにも資格の取得をおすすめします。
印刷機オペレーターにおすすめしたい関連資格
印刷技能士
印刷技能士とは、オフセット印刷に必要な技能を厚生労働省が認定する名称独占の国家資格です。