印刷会社におけるDTPオペレーターの仕事内容と転職に有利な資格

記事内に広告が含まれています。

DTPオペレーターはオペレーターというキーワードから単純作業ばかりしているようなイメージがありますが、実はそうではありません。原稿の指示通りに編集することは当然のことですが、クライアントとエンドユーザーのことを考え、より読みやすくわかりやすい印刷データ作りをしてこそ真のDTPオペレーターといえます。

どのような業界にもいえることですが、専門的で高度な知識とスキルを持っていれば転職先に困ることはありません。DTPオペレーターも同様に、高度な知識とスキルがあれば印刷会社に限らず広告代理店や編集プロダクション等、どこへ転職したとしても評価されることは間違いないでしょう。

ここでは、印刷会社におけるDTPオペレーターの仕事内容や取得しておきたい資格などを簡単にまとめています。

そもそもDTPオペレーターとは?

DTPとは、Desk Top Publishing(デスクトップパブリッシング)の略で、パソコン上でDTPソフトを駆使し、レイアウト編集し印刷データを制作することです。DTPオペレーターは、そのDTPソフトウェアを操作し、印刷データを作る人のことをいいます。

DTPオペレーターが、主に使用するDTPソフトはAdobe社(アドビ社)InDesign(インデザイン)とQuark社(クォーク社)QuarkXpress(クォークエクスプレス)です。その他、イラスト制作ソフトとしてAdobe社Illustrator(イラストレーター、通称イラレ)、写真レタッチソフトとしてAdobe社Photoshop(フォトショップ、通称フォトショ)があります。

ページ数が少ない簡易なレイアウトでは、DTPソフトではなくIllustrator(イラストレーター)のみで印刷データを制作する場合がほとんどです。

昨今では、Windows環境でのDTPも一般的になってきましたが、印刷業界ではこれまでの経緯からMacintosh環境でのDTPが主流となっています。DTPソフトはWindows版、Macintosh版どちらも同じものですが、キーボードの違いでこれまで習得したショートカットがそのまま使えないこともあります。もっとも違うのはOSの違いによるインターフェースではないでしょうか。DTPオペレーターとしては、どちらのOSにも対応できるスキルと知識は持っておきたいところです。

同じようにイラレやフォトショを使う職種でグラフィックデザイナーがあります。どちらも印刷データを作ることでは同じ(印刷データ以外を作っている場合もあります)ですが、そこには大きく異なる点があります。

グラフィックデザイナーについては、こちらにまとめてありますので興味のある方はご参照ください。

印刷工程に沿ったDTPオペレーターの具体的な仕事内容

印刷会社のDTPオペレーターが印刷工程の中でどのような仕事をしているのか具体的に説明します。

DTPオペレーターが関わる工程

  • DTP編集
  • 校正
  • CTP

※印刷工程はこちらを見て下さい。

DTP編集

DTP編集を始める前に作業書(指示書)をしっかり確認します。仕事によっては短納期のケースもあり納期の間際になって取り返しのつかないことにもなりかねません。もし、不明点などあれば、営業や制作ディレクター、グラフィックデザイナーなどに質問し不明点が無いようにしておくことがとても重要です。

先割としてグラフィックデザイナーやエディトリアルデザイナーに依頼してある場合には、デザインフォーマットを支給してもらうと同時に詳細についても確認します。

編集を始める前に確認しておかなければならない項目

  1. 仕上り仕様(サイズ、製本・加工仕様、カラー)
  2. スケジュール(納期、校正日と回数、下版日)
  3. 校正方法(部数、サイズ、PDF要不要、カラー・モノクロ出力、色校正の有無)
  4. 予算(工数管理)
  5. CTP(印刷機の種類、刷版サイズ)
  6. スタッフの役割分担(複数で編集する際、誰がどこを制作するのか)
  7. 制作環境(ソフトウェア選択、ソフトウェアバージョン、フォント、素材ファイル形式など)
  8. 原稿の入稿形式(写真データの色変換なども含む)
  9. 入稿後のデータ管理

上記のことが確認できたら制作に取り掛かります。

クライアントから完全な原稿が出稿される場合はすぐに編集作業に取り掛かかることができますが、必要な原稿や写真やイラストなどの素材が全て揃っていない場合でも制作に取り掛かることもあります。

制作の進め方はDTPオペレーターによって様々です。DTPオペレーターの作業しやすいようにすすめるのが一般的ですが、印刷会社によっては作業効率を高める為に作業手順の統一化を図っているところもあります。

指示通りのレイアウトが完成したら、クライアントに内容を確認してもらうために校正出しとなります。

校正

校正とは、クライアントが内容を確認することです。クライアントに全体のレイアウトから文字や写真・イラストなどイメージ通りか確認してもらいます。

クライアントに提出する前に印刷会社内でチェックを行うことを“内校”といいます。

校正は基本的にプリントアウトした紙(ゲラ)を提出します。初めての校正を“初校”、二回目を“二校”、三回目を“三校”となります。スケジュールにもよりますが二校~三校程度で印刷工程に移行するのが一般的です。

それぞれの校正でクライアントから指摘のあった箇所を修正し何度か校正を繰り返し、もう修正するところがなくなった時点で“校了”となります。

最終段階で、例えば一文字だけ間違っていたところをクライアントが発見したが、印刷会社に修正を任せて“校了”とすることを“責了”といいます。

メールでPDFデータを送信し校正する場合も良くあります。メールで校正を行う際に注意しなければならないのは、実サイズより縮小して確認するケースが多いので、仕上がった印刷物が実サイズと違っていたなんてこともありますので、PDFデータで校正するのは最終段階の“念校”であれば問題ないでしょう。

色校正

カラー印刷で特に色彩にこだわりがある場合には色校正を行ないます。文字などを確認する“校正”と違い、色の校正は非常に抽象的な部分が多くトラブルに発展するかプリンターや画面の色合いと印刷物の色味は全く異なるため、印刷したときにどんな色になるかを確認することを“色校正”といいます。色校正は色を確認するための校正ですから、基本的に文字等の修正は入りません。

CTP(コンピュータトゥプレート)

印刷用のアルミ板に印刷データを焼き付ける工程です。大きな印刷会社ではCTP専門のセクションがありますが、中小印刷会社ではDTPオペレーターがCTP工程まで兼務することが一般的になっています。

出来あがった刷版を印刷工程に渡して(下版という)、DTPオペレーターとしての仕事は終了します。

まとめ

印刷会社には、チラシや会社案内、総合カタログなどさまざまな仕様の仕事が入ってきます。そのためDTPオペレーターにはあらゆる印刷物の仕様に対応しなければならないので、印刷や製本・加工の知識は必須となります。

DTPオペレーターにはミリ単位の非常に細かく正確な作業が要求されます。データの管理を一つ間違えるだけで途中まで行っていた作業が保存されずやり直ししなければならなくなったり、ひどいケースでは印刷データを間違えてCTP出力し印刷したため刷り直しになったりと、非常に重要な役割を担っています。

折込チラシなど短納期で動かす印刷データを作るような場合には、残業や休日出勤にも対応しなければなりません。

クリエイティブワークの一部はグラフィックデザイナーの役割なのですが、DTPオペレーターにも求められる場合があります。印刷会社の規模や組織体制、個人のスキルによっても異なりますが、DTPオペレーターのなかにはグラフィックデザイナーのようにデザイン性に優れ、画像のレタッチ作業やイラスト素材の作成まで求められるケースまであります。イラレやフォトショップもグラフィックデザイナー並みに使いこなすDTPデザイナーも大勢います。

印刷会社のほかに転職先の候補として、デザイン会社、編集プロダクション、企業の企画部門や広報部門などがあります。正社員よりも契約社員や派遣やアルバイトの求人が見られます。

パソコンやDTPソフトなど安価にそろえることが出来るようになったので、専業主婦が在宅でDTPオペレーターとして仕事をすることも増えてきました。また、クラウドソーシングなどで積極的に受注し、フリーランスとして生計を立てるDTPオペレーターも存在します。

DTPオペレーターとして取得しておきたい資格

転職や就職を有利に進めたいなら資格を取得しておいた方が間違いありません。

おすすめしたい資格は、「DTP検定」「DTPエキスパート」です。

特に「DTPエキスパート」は、公益社団法人日本印刷技術協会(略称・JAGAT)が認証する資格で、印刷会社が必要とする知識とスキルを習得している証を提供する制度です。

また印刷会社におけるDTPオペレーターは印刷の知識にも精通していることがとても重要です。DTPエキスパートと合わせて、「印刷技能士」「製版技能士」「製本技能士」などの資格も取得しておくと印刷会社への就職や転職に大変有利になります。

DTPソフトのスキルを極めたいという方におススメなのは「アドビ認定エキスパート(ACE)」というのもあり、将来インストラクターを目指すことも可能です。

DTPオペレーターになるにはどうしたらいいか?

DTPオペレーターになるのに何か資格や免許が必要ということはありません。DTPソフトが使えればDTPオペレーターになれます。極端なことを言えば、印刷会社で働かなくても在宅でパソコンとDTPソフトがあればDTPオペレーターとして仕事をすることができるのです。

ただ、どこの印刷会社も未経験者を採用するほど甘くはありません。ある程度のスキルと知識は必要になります。そのためにも上記の資格を取得しておく方がいいでしょう。

経験を積むということでは、クラウドソーシングなどで簡単なDTPの仕事をこなすことで経験値はあがります。いちど試してみてください。

DTPオペレーターに向いている人は?

・細かい作業も気にならない
・何かを作り出すことが好き
・デザイン・編集・ライティングに興味がある
・人とのコミュニケーションが苦にならない
・テキパキ処理することができる

印刷会社では、営業や印刷機オペレーターなどと連携して仕事を進めていくことがほとんどですから、コミュニケーションを取れない人には向かない仕事といえます。職場の人間関係や労働環境によって大きく左右されてしまうのがDTPオペレーターという職種でもあります。