既存顧客への提案営業は顧客のタイミングや予算など売上を伸ばすにも限界があります。成長著しい顧客が取引先であれば顧客の成長と共に印刷物も増え、印刷会社の売上もどんどん増えていくことが見込まれます。しかし、ほとんどの顧客は厳しい環境のなか印刷費コストを削減する方向にシフトしています。ずいぶん前から言われていることですが、新規開拓を避けて通ることはできません。
とはいえ、新規開拓には時間と労力が必要です。既存顧客の仕事を抱えながらの新規開拓はなかなか思うようにいかないのが現実です。
印刷会社の中には専門性に特化しWEBで効率よく集客したり、さまざまな展示会に積極的に出展し新規開拓のきっかけ作りをしている会社もあります。しかしながら、コストや人材を考えるとまだまだ足で稼がなければならない印刷会社の方が多いのではないでしょうか。
印刷会社の顧客対象はどんな業種でも当てはまってしまうので、やみくもにテレアポしたり飛び込み営業をしても、的が絞りにくく成果に結びつきません。売りたい商品を売りたいターゲットに的確に営業することがとても大切です。
ここでは、私自身が取り組んでいるテレアポによる新規開拓の方法を詳しくまとめてみたいと思います。特別な方法ではありませんが、現時点でアポ成功率5割の方法です。興味のある方はぜひ試してみてください。
アポ率5割!テレアポによる新規開拓の手順
- 売りたい商品を決める
- リストアップする
- スクリプトを作る
- 電話する
- 初回訪問する
- 継続して接触を持つ
1.売りたい商品を決める
まずは、たくさんの商品群の中から売りたい商品を決めます。売りたい商品というよりは自社の得意な商品といった方がいいかもしれません。これまでの自社の実績の中で、最も多く受注している商品は何か調べてみましょう。多く受注しているからには何かしらの理由(強み)があるはずです。その強みが分かれば、それを武器に新規開拓していきましょう。
得意な商品が見つからない場合は、他の印刷会社ではやっていないような変わった商品はないか?既存顧客の商品で同業他社・類似した他業種に展開できそうなものはないか?大量に仕入れている紙があるなら競合他社に価格で勝負できるのではないか?というような観点で考えてみましょう。
それでも商品がないという時には、自社で編集・印刷・製本までの工程をすべて完結できる商品を選びます。新規開拓では、初めは特値を提示しなければならないような状況も考えられますから、会社全体でコスト面・体制面を考慮して売る商品を決めたほうがいいでしょう。
2.リストアップする
企業リストを準備するにはいくつかの方法があります。有料で用意するなら帝国データバンク企業年鑑や商工会議所会員名簿など、手間でも無料で準備するならiタウンページなどです。出来るだけたくさんの企業リストを準備し、実際にテレアポする企業をピックアップします。
もちろん上から順番に一件一件テレアポしてもいいのですが、売りたい印刷物が必要とされているのか分からないため大変非効率です。相手企業のこともよくわからないまま電話するというのは大変失礼なことだと個人的には思っています。
テレアポする前に、売りたい(受注したい)商品がある、またはありそうな企業をピックアップします。その方法は次の5つの判断基準でピックアップしています。全ての基準を満たすような企業はありませんが、いくつかクリアすればいいのではないでしょうか。
テレアポする企業をリストアップする5つの判断基準
- 製品やサービスを使うエンドユーザーが多い(印刷部数が見込める)
- 製品単価が高い(高単価が見込める)
- チラシの折込み回数が多い(発注回数が見込める)
- キャンペーンやイベントが多い(多種類の印刷物が見込める)
- SNSなど新しいことに積極的(新しい情報を取り入れる環境がある)
1.製品やサービスを使うエンドユーザーが多い(印刷部数が見込める)
たとえば、自動車のダッシュボードの中にあるオーナーズマニュアルは、新車の出荷台数(2014年度は約550万台)と比例したマニュアル印刷が存在します。同様にスマホなどエンドユーザーが多ければ多いほど同梱する印刷物も多く必要になります。
2.製品単価が高い(高単価が見込める)
エンドユーザーが多いからといっても製品単価が安いと、コストとなる印刷物も低単価となります。製品単価は高い方が、仕様も高品質で凝ったものとなり印刷物も高単価が見込めます。
3.チラシの折込み回数が多い(印刷回数が見込める)
たとえば、分譲マンションのチラシは毎週のように折込まれてきます。販売状況によって売らなければならない部屋が売れるようにデザインやコピーを変更しなければならず、不動産広告を得意とする広告代理店でなければ対応が難しいためノウハウがない印刷会社では参入できないと考えがちですが、データ作成まで広告代理店で行い、印刷は印刷会社という分業制にした方がコストダウンが図れます。広告代理店は印刷会社の見積りに利益を乗せているだけですから、印刷コストだけで言えば印刷会社に利があります。
4.キャンペーンやイベントが多い(多種類の印刷物が見込める)
キャンペーンやイベントでは、多種類の印刷物が必要になります。チラシやポスター、アンケート用紙、ノベルティ、のぼりなど印刷会社の事業領域を越えたものまで受注するチャンスがあります。
5.新しい技術などに積極的(新しい情報を取り入れる環境がある)
たとえば、製造メーカーが自社サイトをFacebookやtwitterと連携させて新たな可能性を模索しているような会社には、新しい情報を積極的に取り入れる土壌があると言えます。
私がリストアップしている企業は、ホームページに製品パンフレットや総合カタログ、取扱説明書などのPDFデータが掲載されているメーカーです。PDF化されているということは編集データが存在するということですし、PDFデータだけ作るとは考えにくく印刷も行なっていると想像できます。
条件を絞り込むほど電話でのアプローチがしやすくなりますが、対象企業が少なくなってしまいます。対象があまりにも少なってしまった場合には、業種や商圏を拡げるなどしてリストアップ件数を増やすようにしましょう。この際、注意しなければならないのは、遠方過ぎてレスポンスのいい営業活動が出来ないことが予想される企業は次の機会にしておきましょう。
リストアップしていく中で、ホームページが存在しない企業は自社の告知に積極的ではないので、外向きの印刷物を数多く印刷するとは思えません。いつでも安定した受注が見込める大手メーカーの下請け企業でも同じようなことがいえます。
メーカーは製品を売るために広告宣伝に多額の予算を割きます。その広告宣伝活動の一つが印刷物です。広告代理店と競合することもありますが、印刷だけであれば価格面で負けることはありません。
広告宣伝費をたくさん使う企業はすでに数社の印刷会社や通販印刷会社と取引しています。だからといって満足しているケースは少なく、もっとコスト削減したい、もっと提案が欲しいなどさまざまな課題を抱えています。
印刷会社によっては、新規で取引する場合は与信調査が必要な場合があります。営業マンとしては、受注出来そうなところまで行って取引NGとなってはやり切れませんので、リストアップする前にあらかじめ自社のボーダーラインを確認しておいた方が良いでしょう。
3.スクリプトを作る
リストアップと同時に進めておきたいのが、テレアポスクリプトの作成です。スクリプトとは電話応対の台本のようなものです。こちらから相手に伝えるべきこと、想定される相手の返答、その返答に対する返しを分かりやすくフローチャート形式にまとめたものです。スクリプトは、一度作ったら終わりというわけではなく、テレアポしながらバージョンアップしていきましょう。
過去にテレアポをしたことがある方はわかると思いますが、どこに電話しても同じような対応になりパターン化することができます。このスクリプトを見ながらテレアポを行なえば、無駄に緊張することもなくなりますので、相手に安心感を持っていただけます。
スクリプトには、このようなことが書いてあります。
・ホームページを見てはじめて電話した旨
・印刷の営業電話である旨
・ホームページに載っているこの印刷物の担当者につないでほしい旨など
実際に使っているのはこのテレアポスクリプトです。スクリプト内の「カタログ印刷」を変更すれば他の商品でも使えるのではないかと思います。
4.電話する
リストアップとスクリプトができたらいよいよ電話をします。
電話をする前にもう一度企業のホームページをみて、製品やビジネスモデルをしっかりと把握しておきましょう。
・どんな製品で、誰が使うもので、いくらくらいするのか
・印刷物は誰がどんなふうに使うものか
・相手企業の取引先はどんなところなのか
・この印刷物はどこの印刷会社でやってるのか 等
電話をすると最初に応対するのは、たいてい事務などの女性です。
ここがテレアポの第一関門です。ここで切られないようにするためのポイントとして、この女性では判断できないように少し突っ込んだ内容を伝えることです。
単純に「印刷の仕事ありませんか」では、約束ごとのように「ありません」とか「間に合ってます」と断られてしまい。そのあとが続きません。ここで「この〇〇という製品のカタログについて、印刷費コストダウンのご提案をしたい」とより具体的に伝えると、自分では判断してはいけないのではと考え、担当者や周りの上司や同僚に取次いでくれるのです。
この方法で第一関門は突破できます。
テレアポで最もやってはいけないことは、下手に出過ぎて「お願い営業」してしまうことです。
・5分だけで構いませんのでとにかく会ってください。
・どんな仕事でもいいのでとにかくやらせてください。
これでは、相手も時間を割いて会おうとは思わないでしょう。
自信を持って電話をするために必要なことが下調べです。
「ここに課題がありそうだ。」
「こんな情報は役に立ちそうだ。」
ある程度課題を想定して提案内容を考えたうえで電話していることを伝えてください。
下調べのないよくあるテレアポは、本当にセリフを読んでいるだけの気持ちのこもっていないものになります。自宅にかかってくるテレフォンアポインターの電話と同じように、こちらの情報を探りながらその情報に合わせたトークを展開して、何とか糸口を見つけようする、こなれた感じが拒否反応を引き起こします。個人的な感想ですが。
実際のところコストダウンできるかどうか、相手にとって有益な情報なのかどうかは提案してみないとわかりません。相手の要望や詳細仕様などを踏まえた見積りや情報を提示し、判断してもらいましょう。もし役に立てそうもなければ、時間を割いていただいたお礼を伝え速やかに退散すればいいのです。
こちらとしては、コストダウン提案やお得な情報を提供するために行くわけですから、下手に出る必要はありません。ただ、相手に失礼のないように誠実な対応は最低限必要です。
テレアポのポイントは二つ
・会うこと(取引すること)で得られるベネフィットを伝えること
・訪問日時を決めること
あくまでテレアポの目的は、アポイントを取ることです。
要するに「この営業に会えばコストダウンできるかも」、「この営業に会えば新たな提案ネタを持ってくるかも」と、電話の相手に「この営業には会っておいた方が良さそうだ!」と思ってもらえるようにすることです。
普通の会社であれば丁寧な対応をしてくれます。逆に失礼な対応をするような会社とは取引しない方が今後の為です。
最後に、電話する環境は非常に大切です。私だけかもしれませんが、うるさいのは集中できませんし、相手の声も聞き取れません。また、静かすぎるのもやりにくいです。適度な賑やかさがあるとテンポよくテレアポに集中することができます。これは個人の感覚で何とも表現しにくいのですが、とても大切です。
アポイントが取れたら、電話で約束した内容の資料などを用意しておきましょう。
相手の役に立ちそうな簡単な企画書を持っていくとなおいいでしょう。
何事も準備が重要です。準備を完璧にしておけば当日ドキドキするようなことはありません。
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